産婦人科に関係するウイルスワクチンについて
最近では、SARS(重症急性呼吸器症候群)や新型インフルエンザなど新たなウイルスの感染が大きな問題になっております。
特にインフルエンザは、私たち産婦人科医にとって身近な妊娠中の女性が感染した場合、非常に重症化しやすいために注意が必要です。妊娠中の接種にあたって不安は多々あると思います。現在日本で使用されているワクチンは、不活化ワクチンで、妊娠のどの時期に使用しても安全で、赤ちゃんの先天性奇形の発生は高めないといわれております。また、お母さんがワクチンを接種することにより、免疫が胎盤を介して移行し出生した赤ちゃんも感染予防に十分な免疫を獲得している事が証明されております。このため、妊娠中のインフルエンザワクチン接種は、母児共に有効なワクチン接種と考えます。
ウイルス感染で話題になっている疾患として、子宮頚がんがあります。子宮頚がんは、ここ10年間で、国内の20~30歳代女性の発症が2倍に増加しております。子宮頚がんの約95%は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によって発生するといわれております。HPVの中でも、子宮頚がんの約70%が、HPV16型・18型と言われ、これに対する2価ワクチン(サーバリックス)が、H22年10月16日に厚労省で承認されました。このワクチンの接種は、10歳以上の女性で、通常0.5mlを3回(初回、初回から1カ月後、初回から6カ月後)、上腕に筋肉内接種をします。また、H23年8月から、HPV6・11・16・18の4価ワクチン(ガーダシル;子宮頚癌と尖形コンジローマの予防)が同様に承認されました。ガーダシルは、9歳以上の女性に1回0.5mlを3回(初回、初回から2カ月後、初回から6カ月後)、サーバリックスと同様に上腕に筋肉内接種をします。
全世界では、これらのワクチン接種と子宮がん検診を併用することで、子宮頚がんの死亡率を限りなく0にできると考えられています。
さらに、米国では、すでに9価ワクチンが製造されており近年中に、WHOを中心として全世界でこの9価ワクチンの接種が開始される予定になっているとのことです。