医院トピックス

痛みは女性の方が敏感?

2021.03.31

これまでは、痛みの知覚には性差があり、一般に女性の方が痛みに敏感ということを多くの研究者が述べています。そこでその原因を裏付ける論文として、古いものですが 2007年に Aloisi AM らが 「Pain」に発表した文章を引用してお話いたします。
性転換手術を受けた男女の現象について述べた論文ですが、男性から女性に転換した場合(MtF性転換症)には、エストロゲン(女性ホルモン剤)と抗アンドロゲン(抗男性ホルモン剤)が投与されます。これにより、男性ホルモンから女性ホルモン優位な内分泌環境となります。その結果、この中の3割が慢性疼痛(頭痛、筋骨格系の疼痛、乳房痛など)を訴え、その8割は女性ホルモン投与前は自覚症状がなかったのです。
逆に女性から男性に転換した場合(FtM性転換症)男性ホルモンが投与され、女性ホルモン作用が低下する事になります。男性ホルモン剤を投与する前は、60%以上の被検者が何らかの疼痛を訴えていました。しかし、男性ホルモンを投与した後その半数は、症状が軽減されたのです。つまり、もともとの痛みの割合は本来女性であったものの方が高かったことになります。
以上の結果より、痛みの知覚は、エストロゲン(女性ホルモン)が少なからず関与していることが示唆される事から、特に月経のある時期の女性は痛みに敏感なのかもしれません。