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現代の女性に月経は本当に必要なものなのでしょうか?

2017.07.31

医療の進歩により最近、我々婦人科で話題になっているのは、月経の意義についてです。日本産婦人科学会では、25~38日周期で来る月経を正常月経と言っておりますが、この月経は本当に必要なものなのでしょうか?
一般に月経があるのは、ヒト、サル類、コウモリの数種とトガリネズミの1種に限られています。これらの生物に月経が備わったのは、諸説ありますが現時点では、遺伝的に問題のある受精卵が着床した場合、その個体がそのまま生まれた場合のコストが非常に高い為、子宮内膜を脱落させて、淘汰できる仕組みとして進化したという説が最も有力だと言われています。古代ギリシャ時代、ヒポクラテスは「月経とは」健康のために体内の有害物質を排出する現象などとしていましたが、近代医学では、月経血中などに多数の炎症性物質(炎症性メディエーター、サイトカインなど)が同定されている事から、子宮及びその周辺部に繰り返しもたらされる生理的な炎症と考えられています。
一生に5人程度出産していた昔の日本人女性の生涯月経回数は、50~100回でした。現代の日本人女性の場合、1~2人しか分娩しないことから、生涯月経回数は、400~450回になりました。これは、ここ100年前後の間に日本人女性の生涯月経回数が、4~9倍に増えたことになります。この月経数の増加に婦人科器官の対応が出来なくなるのは当然のことです。これが近年、子宮内膜症、月経困難症、卵巣癌などが増加してきた原因と言われています。
この原理から海外では、1年に4回月経を起こす季節的(周期的)ピルによる治療が広く行われる様になってきました。従来からピルの治療は、偽妊娠療法と称され、妊娠と同様のホルモン状態にして月経を正常周期(28日)にしていました。季節的(周期的)ピルの概念は、服用期間を人為的に調節し、思いのままに月経周期を調節しようというものです。
人によっては、1年に3~4回の月経に、また旅行やデートなどに月経が当たらない様に、アスリートの場合はトレーニングスケジュールに合わせて月経調節する事が出来ます。同様に月経が不順な人にも使用可能です。
妊娠を希望する場合は、この治療を中止することで、妊娠率に問題が出る事はありません。逆にこのピルの継続的な使用により、不妊症の原因になる子宮内膜症の改善や予防が出来ると言われています。H29年6月から、月経困難症が対象となりますが日本でも同様の治療を受ける事が出来るようになりました。ご興味のある方は、婦人科の医師とご相談してみられると良いと思います。