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月経困難症と過多月経の新しい治療法

2016.09.21

最近、月経痛や過多月経の治療のため、レボノルゲストレル(黄体ホルモン)放出子宮内システム(LND-IUS)が保険適応となり、治療に使えるようになりました。それ以前までは、LND-IUSは避妊目的のためのみに使用されていました。
ではLND-IUSの効果は、1)子宮内膜の増殖抑制による月経血の減少効果、2)月経困難症の改善効果、3)子宮内膜症や子宮腺筋症の発症・再発抑制効果、4)子宮筋腫の増大抑制効果、5)子宮体癌の予防効果などが報告されています。LND-IUSは1回の装着で、5年間その効果が発揮されるため、ほかの薬物(ピルなど)や外科手術(子宮内膜焼灼術も含む)などと比較しても費用対効果の極めて高い治療手段と考えます。多くの臨床試験で、月経血の減少効果は、LND-IUS装着12ヵ月後に90%以上に認められ、ほかの治療法と比較しても最も高い結果でした。それは、子宮筋腫や子宮腺筋症の人にも同様な結果を認めました。さらに、LND-IUS挿入6か月から3年の間に、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症の縮小を認めたとの報告もあります。
フィンランドで過多月経治療に、LND-IUSを使用した30歳から49歳の女性9万例を対象とした観察研究では、LND-IUSの使用により子宮体がんの発症が約50%抑制されたと報告しています。
英国は、1995年LND-IUSの認可以降、最初の10年で急速な普及を認め、過多月経の治療としての子宮摘出術の年間施行件数は半分以下になったといわれています。これは、LND-IUSがこれらの外科治療法の必要性を減らしたと考えます。
以上より、LND-IUSは、現在増加している子宮体がんの発症抑制、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症など子宮が起因する疾患の治療、強い月経痛や月経血の多い女性全般に対して症状改善の可能性のある新しい方法と考えます。しかし、子宮内への挿入の可否に当たっては産婦人科専門医の診察が不可欠ですので、ご興味のある方は担当医と御相談下さい。