妊娠とビタミンDについて
2023.02.08ビタミンDが最初に注目されたのは、1920年代の光化学スモッグによる紫外線不足に起因する「くる病」が社会問題になった時です。「くる病」の原因は、ビタミンD欠乏であり、その治療法としてビタミンD補充療法が有効治療法とされました。しかしビタミンDの重要性は、骨の成長や骨量の維持だけでないことが最近確認されています。例えば、ビタミンD欠乏による、1型糖尿病、多発性硬化症、統合失調症などの原因になっていたり、発がん性リスクの上昇、感染に弱くなる傾向などがあげられます。
産婦人科として重要なことは、妊娠中に関与するビタミンD欠乏は、妊娠高血圧や妊娠糖尿病、切迫早産を招く可能性があります。胎児においては、ビタミンD欠乏により、骨密度の低下、骨成長のみならず、出生後からの児の長期間の骨の成長に影響を及ぼす可能性が示唆されております。
特に妊娠後期から授乳期には母体のカルシウム代謝が大きく変動します。胎児のカルシウムは母体が唯一の供給源となり、胎児の骨は母親から供給されるカルシウムにより形成されます。特に分娩6週間前には、300~500mg/日のカルシウムが供給され、妊娠後半は、活性型ビタミンDは非妊娠時の約3倍になります。これらの活性型ビタミンDは腎臓のみならず、胎盤でも産生されることで賄われています。更に授乳期には、220~340mg/日のカルシウムが母乳に移行し児に供給されることになります。この時期は当然、活性型ビタミンDの胎盤による供給がないことから母体は、ぞのカルシウム需要を満たすため、自らの骨に含まれるカルシウムを利用しいることが分かっています。
妊娠後期から授乳期にかけてカルシウム消費が増加することから、この時期にビタミンDやカルシウムの摂取を増やしたり、適度の日光浴を行って過ごすとよいと思います。