医院トピックス

アルツハイマー病と女性ホルモン(エストロゲン)

2022.11.16

以前から更年期治療のため行われているホルモン補充療法(HRT)は、アルツハイマー病の予防になると言われていました。ここ最近では、その検証が多岐の研究から明らかになりつつあります。
疫学的にアルツハイマー病は、50歳までは発症率に男女差がありませんが、閉経を迎える50歳以降に急に女性に多くなり、男性の2から3倍の罹患率になります。日本での男女の寿命差を考えると、男性よりも女性のリスクが大きいと考えまます。
アルツハイマーの原因タンパクといわれるアミロイドβは、エストロゲンにより減少させることは、マウスの実験で確認されました。また、アミロイドβに並んでアルツハイマー病の特徴とされているタウ蛋白質もエストロゲンにより抑制されることも確認されています。脳は身体全体のエネルギーの約20%を消費しています。アルツハイマー病患者は、その発症に先立って脳内エネルギーが低下しはじめます。閉経しエストロゲンが低下すると、エネルギー産生率が低下することから、アルツハイマー病の誘因になっていると推測されます。最近、話題になっているポリフェノールやクルクミン、エクオールなどもアルツハイマー病の予防効果について注目されております。
エストロゲンがアルツハイマー病の病因や病態に関係していることは最近の研究からもわかってきてます。しかし多くは基礎研究で、残念ながらエストロゲンは、いったん出現したアルツハイマー病の症状を改善させるものではありません。アルツハイマー病の予防的観点から有効性があるものと考えますが・・・