やせと肥満について(Preconception Care (妊娠する前に行う健康介入)の立場から)
2021.04.14やせと肥満は、一般にBMI(Body mass index;体重(kg)/身長(m)×身長(m))により評価されます。一般に18.5未満がやせ、25.0以上が肥満と定義されております。平成30年の日本での国民健康・栄養調査によると肥満の割合は男性32.2%、女性21.9%でした。またやせの割合は、男性3.7%、女性11.2%であり、20歳代女性のやせの割合は、19.8%で、若い女性のやせの頻度が高い状態が続いています。海外では、肥満はパンデミックの状態で、2030年には、過剰体重または肥満が80%以上を占めると予測されています。
ではやせ女性が妊娠した場合、一般に予測される周産期トラブルについては、切迫早産、早産、低出体重児、胎児発育不全、貧血のリスクが高いことが報告されています。本邦でも胎児発育不全や早産のリスクが高く、逆に帝王切開や過期産が少ない傾向がありました。
妊娠中の体重増加についてよく妊婦さんから質問を受けますが、周産期合併症が少ないのはやせ女性(BMI:17-18.4)では12.2㎏(10.8-13.6)、やせ気味女性(BMI:18.5-19.9)では10.9㎏(9.5-10.9)の増加が理想的でした。
逆に肥満女性では、妊娠高血圧症、妊娠糖尿病、巨大児のリスクが高く、帝王切開率も高いことが報告されています。また、死産(1.4倍)や2分脊椎症(2.2倍)などの先天異常も増加することが示されています。本邦でも同様の傾向があることが報告されているので注意が必要です。肥満傾向にある妊婦の周産期合併症の少ない体重増加量は、肥満女性(BMI:25-27.4)では4.3㎏(1.7-6.9)、肥満気味女性(BMI:23-24.9)では7.7㎏(5.8-9.6)が理想的でした。
肥満傾向にある女性の場合、妊娠前に10%のダイエットにて妊娠高血圧、妊娠糖尿病、巨大児及び死産を優位に減少させたとの報告があります。6か月以上かけて、もともとの体重から5~10%減量することを目標に、栄養指導と運動を含む生活指導がとても有益です。さらに肥満は、先天奇形の頻度が高いため妊娠1~3か月前から葉酸摂取も良いとされています。
やせや肥満は、標準体格の女性と比較して周産期の合併症の頻度が高くなる傾向があります。妊娠前からの栄養状態の改善は不妊治療のみならず、周産期経過や母児の将来のヘルスケアに深く関与しますので、日ごろからの体重管理には注意しましょう。