医院トピックス

更年期治療の最近の話題

2015.11.17

現在日本人女性の平均寿命は、86.4歳で世界1の長寿を誇っています。一方、閉経年齢は、以前より変わりなく中央値が50.5歳と言われています。この事より、日本人女性は、人生の1/3以上を閉経後期間として暮らすことになります。この長い閉経後期間をいかに快適に過ごすかは、とても重要なことです。
婦人科では、更年期症候群の治療に対して以前よりホルモン補充療法(HRT)を施行し、高い有効性を確認してきました。しかし、ホルモン療法に一部の不安を抱いている人も少なくないのではないでしょうか。現在、HRTガイドラインでは、5年以内のHRTの使用では、乳がんの発生率に何ら変化は認めず、服用終了後もその発生率に変化がない事が発表されました。近年、HRTの投与経路についても、内服ではなく、皮膚から吸収させる薬もあります。経皮吸収剤の場合、乳がんや脳卒中、静脈血栓症のリスクを上げずに、心筋梗塞のリスクを減らし、大腸・直腸がんや骨粗鬆症、アルツハイマー病などを減らす効果が認められています。また、新たな効果として、睡眠障害の改善、筋力の維持効果、緑内障の予防効果、歯周病の抑制効果、慢性腎臓病の減少、相対的死亡リスクは約3割減少することなど新たに報告されています。HRTを行うことによる費用対効果は、1女性に対して年間約25万円の医療費の節約になると考えられます。
しかし、HRTも全ての人にできるわけではありません。乳癌や子宮体癌、血栓症の既往のある人、子宮筋腫、子宮内膜症、高血圧、糖尿病のある人の投与に関しては、禁忌または慎重投与になっております。そこで近年、大豆イソフラボンの一つであるダイゼインが、腸内細菌により代謝されるエクオール(女性ホルモン類似物質)が更年期症状に対して有効効果があることが確認されました。具体的には、HRTと同様に更年期症状を含め、骨密度、糖尿病、動脈硬化、高脂血症などのリスクの改善効果が認められています。また、エクオールは、多量な女性ホルモン環境下では抗エストロゲン作用を有している事から、今までHRTができなかった禁忌や慎重投与の人にも使用できます。また、40歳代の更年期様症状、HRTを5年以上施行した後の追加治療、子宮内膜症治療薬による副作用改善などにも応用できると考えます。
しかし、大豆食品を食べてもエクオールは、日本人の約50%の人にしか作れないと言われています。エクオールが作れない人や毎日、大豆食品の摂取ができない場合は、サプリメント(エクエル 大塚製薬)の服用が必要となります。